以前NHKのためしてガッテンで『深蒸し茶が「がん」予防に良いらしい』とされる内容の番組が放送され、大きな話題となりました。
「がんにも効果あり!?」は衝撃的な内容で、番組放送後は大きな反響がありました。
静岡県掛川市では、「深蒸し茶」が、日常的に飲まれている身近なものなので、その成分は健康効果が高いことは知っていましたが、これほどとは…。
番組でもとりあげられた、「深蒸し茶」と「がん」。 茶処掛川の長寿の実態をまとめてみました。
この記事の目次
日本人の「2 人に1 人」が、がんになる時代
アメリカでは減っている「がん」による死亡が、日本では増えています。
日本人は毎年およそ34 万人が「がん」で亡くなっています。つまり日本人の死因の1/3が「がん」という事になります。
「がん登録」が行われてこなかったわが国では正確な統計がないのですが、それでも昨今の医療事情を考えると、日本人の「2 人に1 人」が「がん」になっているんですね。
2 人に1 人が「がん」になり、3 人に1 人が「がん」で死ぬ。日本は、世界トップクラスの「がん大国」と言えるわけです。
なるほど「がん」にも効果あり!?深蒸し茶
今回番組内でも着目されたのが、人口10万人以上の市や区の「がん死亡率ランキング」でした。
ここに興味深い真実が見えてきます。がんの死亡率が低い街には、同じ特徴を持つ街が多かったのです。
例えば、上位15位に含まれる、静岡県の藤枝市・磐田市・浜松市、埼玉県の所沢市、三重県の津市・鈴鹿市、鹿児島県の鹿屋市。じつはこれらの街は、緑茶の生産地なんです。
男女それぞれ、上位の15市区のうち7つの市区がお茶の産地でした。その中でも人口10 万人以上の市区町村で、「がんによる死亡率」が日本一低く、「高齢者の医療費」も全国平均と比べて20 パーセント以上も低い驚きの街、それが静岡県掛川市だったのです。
しかも、ここで紹介された産地は、すべて日常使いのお茶の産地なんです。手軽にたくさんお茶を飲める環境に加え、日常使いのお茶には健康成分の面でも特徴があります。高級茶の栽培ではうま味成分「テアニン」を増やすため、できるだけ日光を浴びさせずに栽培されることが多いのですが、それに比べ、日常使いのお茶は、日光をたっぷりと浴びさせて栽培します。
テアニンは日光を浴びると、健康効果の高い「カテキン」へと変化します。
つまり、日常使いのお茶は健康成分「カテキン」をたっぷりと含んだお茶であり、様々な健康効果につながるのではないかと考えられているのです。
掛川市と深蒸し茶の歴史
昭和30 年代の高度経済成長期には、開墾と同時に「やぶきた品種」の普及が進みました。
さらに、「深蒸し製法」をあみだしたことにより味わいが大幅に改善され、掛川茶は大きな進歩をとげました。
掛川茶はもともと深蒸し製法ではありませんでした。
葉肉が厚く渋味が強い掛川茶はあまり良い印象ではなく、そこで味をまろやかにした自然の甘みを求めて、「深蒸し製法」が始まりました。
当時は製法の未熟さや見た目の悪さなどがあり、茶の本質からして邪道との批判もありましたが、やがてこの製法により、美しい色と自然の甘味が引き出された掛川茶は消費地で認められ、需要が拡大し、次第に各工場がこの製法を取り入れ製造するようになり、これが現在掛川市で主流の「深蒸し茶」として、次第に多くの人々に親しまれるようになっていきました。
深蒸し茶の秘密
掛川で一般に飲まれているのは「深蒸し製法」で作られたお茶です。
鮮やかで濃い緑色の水色と、細かい浮遊物がたくさん含まれているのが特徴です。
これらの細かい浮遊物は、「深蒸し製法」によって小さくこなれた茶葉が急須の細かい網を通り抜けたもので、ビタミンA、ビタミンE、βカロテン、食物繊維、葉緑素、ミネラル等の成分が多く含まれています。これらの成分は、「深蒸し茶」ではない普通のお茶ではお湯に溶けにくいため、茶殻と一緒に捨てられてしまう成分なのです。
ではなぜ掛川のお茶にはこのような成分が含まれているのでしょうか。
それには掛川の土地柄が関係します。
掛川の茶園の多くが、なだらかな丘にあり、日差しをたっぷりと浴びるため、カテキンをたっぷり含んだ渋いお茶になってしまいます。そこで、渋みを和らげ、飲みやすくするためにあみだされた方法が、「深蒸し製法」です。
長時間蒸すことで茶葉の組織がぼろぼろになり、様々な成分が出やすくなります。
更に渋み成分カテキンと、細胞のかけらがくっつきあうことで、渋みを感じにくく、飲みやすいお茶になるのです。
お茶の生産地としては決して最上とは言いがたい土地で、なんとかおいしいお茶を作ろうとした昔の人の知恵が、結果的にカテキンをはじめとする様々な健康成分をもたらしていたのです。
お茶を淹れるコツは…。良薬は口に苦し
お茶の味は、カテキン(渋み)、カフェイン(苦み)、テアニン(旨み)の3 つの成分で決まります。つまり、この3 つの成分をどの様に茶葉から抽出させるかによって、お茶の味は甘く感じたり、渋く感じたりと様々に変化します。その成分の抽出具合とお湯の温度には密接な関係があります。
お湯の温度が高いと、カテキン(渋み)とカフェイン(苦み)成分が早く、多く抽出されます。逆にお湯の温度を低くすると、カテキンとカフェインはゆっくり抽出され、甘み、旨み成分であるテアニンも同じようにゆっくり、じっくりと抽出されていきます。従って、甘みと苦みがバランス良く入ったお茶になります。
もしカテキンとカフェインたっぷりの苦く渋いお茶が好みであれば、お湯の温度は高めに、甘く旨みのあるテアニン重視のお茶が好みであれば、お湯の温度を低めにして、時間をかけて淹れると美味しくなるでしょう。
健康成分を重視したお茶が良いか、美味しいお茶が良かは個人の嗜好の問題ですが、せっかく健康のために飲み始めても、渋すぎたり、苦すぎたりして続けられなくては本末転倒。何事もバランスが大事ですね。
万能成分「カテキン」は、がん予防のキーワード?
今回番組中でも注目されたのは「カテキン」ですが、緑茶には10~20%含まれるポリフェノールで、その他にも血圧上昇抑制作用、血中コレステロール調節作用、血糖値調節作用、抗酸化作用、老化抑制作用、抗突然変異、抗菌、抗アレルギー作用など、多様な生理活性があることが知られており、現在ではさまざまな研究機関から多くの研究成果が発表されています。
- 緑茶カテキンを含む錠剤を飲み続けることで大腸ポリープの再発が抑えられる
- 緑茶に含まれるECG の血中濃度が高いと、女性では胃がんにかかるリスクが最大で7 割 程度抑制できる。
- 緑茶を良く飲む男性は前立腺がんになるリスクが低くなる。
- 魚と茶を一緒にとると記憶力向上や認知症予防が期待できる。
- 緑茶成分のエピガロカテキンガレートにアルツハイマー病の発症を抑える作用がある。
- 緑茶を飲むと血圧の上昇がゆるやかになり脳卒中の発症をおくらせる効果がある。
- 緑茶を1 日7 杯程度飲むことで糖尿病になりかけている人たちの血糖値が改善すること を発見。
- 緑茶を1 日6 杯以上飲むことで、ほとんど飲まない場合に比べて糖尿病の発症リスクが 3 分の1程度になる。
多量のカテキンを含む飲料を毎日飲むことで内臓脂肪や血圧の低下がみられた。
等
お茶はこれからもカテキンの効果を中心に「がん」だけではなく、現代人の健康になくてはならない飲物になっていくんでしょうね。